そして二人は幸せに暮らしました~その12~

走る走る、手だけがとても熱い。

声が後ろから、

風が。

足音が沢山

早く逃げないと

奥様

奥様

奥様

奥様

大きく笑いながらひらりと私の前から姿を消してしまった。いったいどれくらいたっていたのでしょうか。花瓶もどこかへ消えてしまった。夢でしょうか、いいえ実際にあったことです。きっと多分、信じたくはないけれども。こんなことをしている場合じゃない。こうしている内にも何か大変なことが起こっているかもしれない。私がするべきことは、奥様にお伝えすること。ただそれだけ。

考えることもない。外にはまだ、村の人たちがいます。そこに花瓶を持ったゾンナさんが現れればどんなことになるでしょうか。奥様の言葉は伝わっているでしょうか。悲しいですけれど伝わっていないでしょう。

「困りましたね。こうも上手く行かないとは」

「奥様そんなのんきなことを仰っている場合ですか」

「リアリこういう時こそ落ち着くのですよ。慌てても花瓶が手元のに戻ってくるとは限りませんから」

私がゾンナさんに誤れば許してくれるのでしょうか。今すぐここから駆け出して、本当はあの場所で誤ればよかったのですが、どうしてあの時足は止まってしまったのでしょうか。私が走って腕をつかんで、それよりも前に私がもっとゾンナさんを見ていれば。何をどう見ればよかったのでしょうか。もうその時点で良く分からない。もっとゾンナさんとお話をしていれば、ゾンナさんは色々助けてくれたのに私は何もできなかった。私は。

「リアリ」

奥様の方を向く。

「お茶を淹れていただけますか」

コポコポとお茶を入れる。外は何もないかのように静かだ。本来ならば今日は休息の日。お仕事から離れてゆっくりお休みになるのですから嬉しいはずなのに、これは奥様が教えてくれた嵐の前の静けさと言う物ですね。私が淹れると奥様は私にご一緒に飲みましょうとお声掛けをしていただいた。ご一緒にお茶を飲ませていただく。フッと息をついて「人の思いなんてどうしようもないです」と仰った。どういうことですかとも思ったけれども「そうですね」と返した。そこからしばらくお茶を飲んだ。でも、嵐は来た。

「さぁ、あの屋敷に悪しき魔女はいるのです」

まるで大きな蛇のように沢山の人がここを目指して歩いてくる。

「都の騒乱と比べると誰もいないようなものです」と奥様はおっしゃるけれども。

「これに話し合いを持ちかけても、無駄、でしょうね」

「逃げますか」

「いえ話し合いをしましょう」

奥様は真っ直ぐ玄関へと向かった。部屋から出ると使用人が皆こちらを心配そうに見る。

「皆さん部屋で待機していてください。大丈夫です全て終わりますから」私に何ができるかは分からないけれども、そういうしか出来なかった私はどうなっても良い何も関係のない使用人の皆と奥様をどうにかして守らなければいけない。

窓から見た時はゾンナさんの姿を見た気がしたけれども門の前には村の皆さんしかいなかった。だけれどもしっかり、花瓶の欠片は持っている。でも奥様ならばと思うけれども、奥様の笑みは諦めた笑顔だ。もう既に知っているのです、先ほど仰っておりましたし。欠片でも分かる。あの上等な花瓶を持っている所なんて、ここしかないのですから。

「皆様こんにちは」

「よくも俺たちを騙していたなこの魔女め」

「騙していたというのは誤解で」

「もう騙されんぞ、魔女の言葉なんかに騙されない」

まるで地面が揺れるかのように皆が大きく声を上げて、奥様は語り続けるけれど私にも声が届かない。収穫祭の時よりも大きく声が。石が。鎌が、クワが。嵐。

ぎゅっと奥様の手を握る。奥様も私の手を握り返してくれる。無駄だとわかっているけれど、奥様は逃げないで語り続ける。私は頑張って聞く。

「わた・・・あ・た・・を・・・・・・・・・・・・・ます。・・・で、・・・・びん・・・・ます」いいえ、私は慣れております。誰が聞いていなくても奥さまの口元を見れば。

「確かに私はおぞましい女に見えるのでしょうが、しかし領民の皆様に対して真摯な仕事をやっていたことは事実としてあると信じております。私はこの村をもっと実りのある、っ」

石!

「大丈夫ですか奥さま」

「それでも、私は皆様のための領地を続けることをお約束します。これは、わたしの夫、わたしの父から受け継いだ意志です」

「駄目です奥様」

「決して私はなた型を裏切らないと」

「駄目なんです、もう聞いてくれないんです」

今にも、いいえもう、門に手をかけています登り始めます。このままいたら殺されてしまいます。

「奥様」

「それでも私は、話し続ける義務があるのですよリアリ」

奥様はご立派な方です。ですけど。私は走らなければいけない。その場に立ち続けようとする奥様を無理やりにでも安全な所へ連れて行かなければいけない。だけれども奥様は動かない。動かせない。もう奥様は自分が殺されることを分かっているそれでも話し続ける。

「私は領民の皆様を愛しております」

奥様は捕まった。

 

嗚呼なんてことでしょう、

「私は奥様の侍女ですが、それだけに留まらずこの屋敷を預かる責任があるのです」私のことは信じくれる。村の子供であることが残念なことなのか嬉しいことなのか。お屋敷に戻ると皆が顔を出す。レースさんはゾンナさんもメキュベリーさんもチーリーさん、そして奥様のいない今、使用人に指示を出す役目。だけども。

「私たちはどうすればいいんですか」

「まさかこうなるなんて思わなかったですからね」

落ち着いて言ってみたけれども奥さまのようにいかない。レースさんはこういう時どうすればいいか教わってないですもんね、私も教わってないですし。嗚呼、どうしてこういう日に限ってお二方は。お仕事を手伝っている方々の誰かひとりでもいらっしゃれば。ええ分かっています今日は休息日ですからね。仕事がないのですからこのお屋敷を離れても問題ないんですから。本当は。いないから私が手紙を開けてこうなって、ああもう私のせいだ。私じゃなくてレースさん他の方が見ていれば。いけない不安そうな目で見ている。落ち着け私でも優雅に、不安を取り除かなければいけないですよね。

「今、奥様は出かけております」

「リアリ様、あの」

「お庭は悲しいことに石だらけです。これを片付けましょう。安心してください村の皆さんは帰りましたから。それと、いつも通りお屋敷をピカピカにしておきましょう。奥様が帰ってきた時汚れてはいけませんからね。」

「ですがその」心配そう。やっぱり私じゃレースさん、いいえ皆さんの心配を拭い取ることは出来ないのですね。

「安心してくださいお給金ならば、きっと払えますから」

「リアリ様そういうことではなくて、奥様が連れていかれたんですどうすればいいのでしょうか」まぁですよね。よし分かりました私は奥様の真似しても無理です。お二人は確か隣町のはず。助けてもらおう。

「チーリーさん、メキュベリーさんのお帰りはいつになるかご存知ですか」

「午後の鐘がなる前には戻るとおっしゃっていたので、そんなに遅くならないと」

「では、急いでお二人を迎えに参りましょう。既に用事は終わっているかも知れませんから。そして、誰かゴルドン様がいらっしゃる病院へ。領主様がいらっしゃらない今先代の領主様であるゴルドン様のお力を借りましょう」

「しかし、立つことも難しいと」

「確かにそうなのですがお見舞いに参りました時は足以外はお元気でしたから、寝台の上で指示をいただきましょう」

「分かりました」

「今この屋敷、使用人の頭はあなたなのですから頑張ってください。私は侍女ですから侍女のやるべきことをします」

「やるべきこと」

「私はこれから奥様を迎えに行きます」

「どうやってですか!殺されてしまいます」

「そうかもしれません、方法もわかりません。だけどやるしかないんです、」実際そうするしかないから。

風が音を立てて吹いている。

さてこれからどうしよう、私の言葉をもとに皆さん動いてくれますがこのまま皆さんを置いて行ってしまっていいのでしょうか。恐らくメキュベリーさんもチーリーさんまさかこんなことになっているとは思っていらっしゃらないでしょうから。私もお迎えに。いえ、私は奥様の侍女なんですから。頑張らなければ。

服、着替える。お母さんが仕立ててくれた。これで私は侍女ではなく村の女リアリに戻るのかなるのか。お屋敷に来たときとは比べ物にならない上等な服。私なんて昔みたいなボロでいいのに、皆のためのお金からこうして。お母さんお父さんは今どうしているのだろうか。あの中にはいなかったけれども。

私の言った通りに動いてくれていることに安心してから奥様をお迎えしに行く。お気をつけてと言われた。私が馬に乗れたならばおとぎ話の騎士様のように助けられるのですが。とにかく歩くしかない。ひたすら。とぼとぼずっと歩く。最初にお屋敷に来たときはひたすら馬車から流れる風景を見ていた。その時と比べてまったく変わらないような変わっているような。ここから村までは遠い。だけども歩くしかない。

お屋敷に来てからのことが永遠のように感じた。おとぎ話のような毎日を思い出す。

日もだいぶ動いたけれど皆はどこへ行ったのだろうか。もし私が見つかればどうなるんだろう、村に戻ってくれたと思われるのかそれとも。とりあえず家。それくらいしか私にはわからない。家まではいつも通っているはずなのにどこまでも遠い、とりあえず家に付けば何とかなるわけではないけれどやみくもに探すよりもどこにいらっしゃるか知っているかもしれないし。怖いくらい誰もいない。見つからないように気を付けて行ったら誰も見ることなく家に付いちゃった。この村の人全員が奥様の所にいるのだろうか、奥様は無事なのだろうか。

扉をトントン叩くと、私たちは行かないぞとお父さんが怒鳴った。「私、リアリだよ」開いた。

「無事だったか」

「心配かけてごめんなさい」泣き出しそうな顔をしてる。

「いいんだ、さぁ家に入りなさい」

「お父さん、領主様のこと知ってる?」

「さぁ家に入りなさい」

分かる、お父さんは怖がっている。こんなに強く引っ張ることなんてしないのに、何でここにいるかも聞かないなんて。

「リアリ?」

「領主様はどこ」

「あのなリアリ」

「領主様はどこ」

じっと見つめる。いつでも優雅に、奥様に教わったように。慌てずずっと見つめるお父さんを。そうすれば良い、こうすることが何よりもずっと良い。お父さんは怯えている、力持ちで明るかったのに。

「領主様は」

「もういい、分かったから見つめないでおくれそんな目で」

「領主様は」

「穀物倉庫にいる」

穀物倉庫、ここから走ればそんなに遠くない。よし行こう。

「リアリ」

「ああそうだ、お父さんありがとうじゃあ行くね」

「待って」

薄暗い部屋、こっちを見てるお母さんは、皆は。

「じゃあ、行ってくるね」

麦の穂が揺れている。どんな時でも麦は綺麗だなぁ。

走る走る何処までも走らないと私はいけない。場所は知っている私が生まれた場所だから、皆知っている私に優しくしてくれたから。苦しい足が痛い、ぼーっとするでも走る。これは全て私のせい。私が何をしたのか分からない。でも、ゾンナさんは私に怒って奥様を殺そうとしている。もうどうしたらいいのかは分からないけれどただ走る奥様を助けるゾンナさんに謝る。それだけ、出来ることをする優雅に。こんな走ることが優雅とは思えないけれども。

穀物倉庫は、窓が無い。入口が一つだけ。考えている間にも奥様がひどい目にあっているかもしれない。よし頑張れ私。周りには誰もいないきっと皆中にいる。私を止める人はいない。怖くない恐くない、怖いけれども。私が出来ることはひたすら走るだけ。

走る、そのまま扉を開けて。

「だっ」

痛っっい。鍵開いてない。痛い。おでこぶつけちゃった。そうだよね閉じ込めてたら鍵開けないもんね。痛い。空いて無かったらどうやって入ろう。鍵とか盗んでくるしかないけれど。

ドアが開いて「誰だ一体」

「あっ、ええとお久しぶりですリアリです」

「ああ、リアリちゃん。大きい音がしたから何かと」

「中入りますね」おじさんを押し飛ばして中に入ると村の皆と奥様が。リアリちゃん、あそこの娘か。色々な声が聞こえる、今日は挨拶をしない、皆を無視して奥様の所に行く。「何をするつもりだい」そんな声は聞かない。服を引っ張られる。動けない。嵐のような風の音が遠くから聞こえる。

奥様はこっちを見ている。顔がはれている殴られたのでしょうか。そんなことをみんながするなんて。目が、帰りなさい逃げなさいって言っている。いいえ私は帰りません。奥様を連れて帰るまで。

「皆さん聞いてください」一番大きい声で。

「領主様を、奥様の旦那様を殺したのは私です」皆の動きが止まった。今しかない無理やり前へ進む。もう少し

「リアリそれはどういうことだ」

「奥様は前の領主様に酷い目に合わされました、だから私は殺しました。奥様は私を守るために隠してくれました。その後のことは偶然ですけど最初は私が殺しました」

叫びながら進むと奥様に触れた。

「何をしたか分かっているんですか」優雅だった奥さんが震えながら言う。

「正しいことです」

「この後どうするんですか」

「分かりません」

皆が見ている。悪魔、魔女人殺しって言っている。私が出来ることは走ることだけ。でも人が多い中走り抜けられるかな。

「火よ!」

火!

「麦が燃えているわ」

「本当だ備蓄の袋が」

焦げた匂いで倉庫が一杯になる。煙が出している皆慌てる。皆逃げる、だから「奥様走りますよ」

 

風が強く吹いている、奥さまの手は熱い。

「何処に行くのですか」

「教会へ」

教会は神の家。そこで暴力することがどんな意味を持つかみんな知っている。だからあそこに行けば。牧師様はあの中にいなかった。ならば教会にいるはず牧師様なら。「走りますよ奥様」

でもここまで走り続けても平坦な道だとすぐ追いつかれてしまう一度林を通ってぐるーっと回ると教会の裏側に出れるはず。「奥様林に入ります」

風で足が重い。村の人達から離れられたけれど、このまま教会に行くには距離がある。

「リアリお逃げなさい」

「どうしてですか」

「わたしはあなたと違って野山を駆け回ることに慣れていないんですよ」

「私も別に慣れているわけじゃないんですけど。足痛いんですか」

「ええ、ごめんなさい足手まといになっているからリアリだけ」

なんてことを。

「私が奥さまを見捨てるようなことをするとお思いですか」

奥様がこんな目で私を見ている。美しい髪はぼさぼさに、布は破れて、砂埃にまみれて。奥様はこんな目をしない、いつでも優雅。

「ごめんなさいね、私のせいで」

私が出来ることは走ることだけ。

「奥様行きますよ」

「でも」

「大丈夫です、教会に行けば」

声が聞こえる。

「奥様、そこの樹は大きいので隠れられます。そこでお待ちください」

私は、奥様の侍女。いつまでも奥さまのお傍で奥さまの為に。ここは私がやるしかない。耳を澄ませる、風の音に混じって声が聞こえる。ン、サン、リサン、リアリさん。

「リアリさーん、リアリさーん」ゾンナさんの声だ。ゾンナさんは、どちらだろう。私がきちんと謝れば・・・。私は殺されるかもしれない、だけども奥様だけなら。ゾンナさんは優しい人、お屋敷に来たばっかりの私に優しく教えてくれただから。声のする方へ歩く。

「ゾンナさん」

「先ほど振りでリアリさん。お会いしたかった、まさかあそこで告白するなんて」

「本当に申し訳ありませんでした」

「どうして謝るんですか」

「私がゾンナさんを怒らせたから」

「いいえ、いいえ怒らせて何かいませんよこれは私の愛なんです」

「愛」愛?

「ええ、私はリアリさんを愛しているんです」

「そんな」

「知らなかったでしょう、それは当たり前です貴女は奥様しか観ていなかったんだから私なんか気に留めることなんてなかった」

「そんなことありません」ゾンナさんは優しくて

「私はあなたの先輩としている内に私を慕ってくれるあなたに好意を抱きました。決して慕ってくれた人間全てに好意を抱くわけじゃないんですよ」

「じゃあどうして」

「リアリさんだからですよ」

ゾンナさんは冗談を言っているのだろうか、でもあの目は。

「私はただ貴女と仲良くしたかった、でも貴女は貴女だから奥様の方しか観ない。私はずっと見ていたんですあの日も」

「気づかなかった」

「でしょうね、あの時本当は何がったのか私は知りません。でも、冷静な奥様がそうでいられなくなることがあったのは知っています。それで今ここにいる」

「私を殺すんですか」

「まさか、どうして逃がしたか分かりますか」

「逃がす?」

「ええ、まさかあの瞬間偶然倉庫の穀物が燃え何て思ったんですか?火打石くらい持っておくものです」火打石なんてそんなに使うことなんてあるのかな。

「じゃあどうして逃がしたんですか」

「私を愛してください、リアリさん」

じっと見つめる目。私の知らないゾンナさんの眼。でも、これがゾンナさんの眼だったのだろう。私はまだ知らないことばかりだったんだ。どうするべきか私は分からない。でも、拒絶したらもっとひどい目が合うかもしれないそしたら「いけませんよリアリ」体が合った買い物に包まれて。

「貴女はわたしの侍女なのですから、わたしだけを愛して」

奥様が私を抱きしめている。危ないのに心配して?

「ゾンナ」

「叱責なさいますか」

「いいえ。行きますよリアリ」

奥様は手を引っ張って林を駆けていく。後ろを振り向くとゾンナさんが笑って私たちを見つめている。私は前を向いた。

「奥様」

「リアリ、教会はどちらですか」

「あ、すいません。ご案内します」

ダメだ私あのくらいのことで私がやるべきことを見失うなんて。

「お屋敷はどのようになっていますか」

「今、出かけているお二人に戻ってもらって、領主様のお仕事は一時的にゴルドン様にお願いして」

「良い判断。お父様なら喜んで引き受けるでしょう。あんな姿でも」

「勿論一時的です一時的」

風が弱まってきた。動きやすいこれなら教会まで走り抜けられる。

「リアリ」

「何ですか」

「この後どうなるか分かっていますか」

「教会に行きます休みます、そして」

「お屋敷にはもう戻れない」

「はい」

「最早、私が領主になっても従わないでしょう。それ以上にリアリ貴女は殺されるでしょう」

「ええ」

「どうするんですか」

奥様は見詰めてくる。私は頭に出てきた考えを捨てる。でもまた出てくる。今私がするべきなのはどう進むべきか。だけども考えても考えても同じ考えしか出てこない。私が出来ることは走ることだけ。でも、これを行ったら奥様はどう思うのだろうか。

奥様の眼を見る。いつもと同じ優雅で静かで美しい眼を。

「一緒に行きましょう、どこか遠い街で暮らしましょう」

「どうやって暮らすんですか」

「私、お裁縫には自信があるから、それで」

奥様が目の前に。口に柔らかい

「リアリ、貴女は本当に」すぐに口から離して奥様は言う。

「本当に何でしょうか」

「良い考えですよ。でも安心しなさいわたしは領主なのですよ」

リアリ走りましょうと駆け出した.。私は奥様と横並びで走る。奥様は語りかけてくる。

「教会に着いたら式を挙げましょう」

「式?」

「ええ素敵な結婚式を世界にわたしとリアリしかいない」

「でも私たち」

「それが何の関係があるというのですか。わたしは、ええ、わたしはリアリを愛しているのですから。それ以上の正しいことなんて存在しないのです」

「私もお慕いしております。奥様」

「私は貴女の妻になるのですよ、奥様なんて呼ばないで」

私は名前を呼ぶ、恥ずかしそうに笑う。私はもう侍女ではなくリアリとして奥様のお傍に。

先の方に人影が。隠れて見ると村の皆が。教会まではあと少し。入ったら、体を綺麗にして式を挙げて。流石に教会までは来ないはず。神様の家にいる間に都の方々と連絡を取れば。奥、私の妻が言うならきっと大丈夫。ここを通ればすぐだけど、林を出ると麦畑があるその中を進めば見つからずに教会までたどり着ける。

「麦畑へ出ましょう奥様」

麦畑を進み教会へと向かう。風が吹いているから動いていてもそれで見つかりにくい。少しずつ、教会へと近づいていく。ふと後ろを見ると中腰で歩くのが辛そう。こんな不格好な姿に合わないけれどもでもここを抜ければ。林の方を見ると私たちを探す皆の姿が、こっちを見ている?見つかったでも、こっちを見ているのでなさそう?焦げ臭い匂い、煙が後ろから、振り替えたら炎が麦を燃やしてこっちにくる。

「リアリ」

「風です」風で炎が大きく燃え広がって。

「あれはゾンナですね」本当だ炎の奥にいる。ゾンナさんが付けたの?火打石!

「リアリ早く逃げましょう」

教会までもう少しそこまで逃げれば牧師様が守ってくれるはず。大きい声が聞こえる林から私たちめがけて皆がやってくるまるでイナゴのような勢いで。急いで走る、美しい麦の中を分け入って。炎が近づいてくるみんなが走ってくる。教会はもうすぐ。

燃える、捕まって殺されるいいえそんなことは起きない。私は手を強く握る。これまでのことを思い出す。そして思うここはまるでおとぎ話のような世界。だから私は知っている。お母さんが話してくれおとぎ話、その終わりは全部こう終わるって。

そして二人はしあわせに暮らしましたって。

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