【対談】
近藤良平×勝山康晴×『可能性の獣たち』×前編

BITE編集部が「いま気になるコトに歯形をつける!」をコンセプトにスタートさせた公式サイト限定コンテンツ。今回はダンスカンパニー・コンドルズの近藤良平と勝山康晴による対談記事を公開します。コンドルズとあうるすぽっとがタッグを組んだ新型ダンスフェス『可能性の獣たち2017』の成功から約1年。この2月に待望の第2弾『可能性の獣たち2018』が開催されます! コンドルズメソッドがたっぷり注入されたこの企画。そこに芽吹く大いなる“可能性”とは−。

唯一言えるのは、まあ、可能性はある

今日は『可能性の獣たち』に関するお話を伺います。まず素朴な疑問なのですが、これは「可能性を秘めた若手ダンサーを応援する企画」という解釈でよろしいですか?

勝山

トータルの意味ではそうなります。ただ、タイトルを付ける際に悩んだのは「彼らのことをどう例えたら良いのだろう?」ということ。「挑戦者」はイメージが違うし、「ダンサーとして食えている」わけでもないし、何だろうなぁ? と。唯一言えるのは、まあ、可能性はある。で、おそらく今後の人生設計とかプランとか、そういうことをいい加減に考えている連中だと思うんですよ。それって野蛮だよなぁとか、その辺りから「獣」という言葉を選びました。だってコンテンポラリーダンスで食うのってめちゃくちゃ大変ですよ。

近藤

大変です。普通は考えない方がいい。

勝山

一回目の『可能性の獣たち2017』に出た子が、俺に「良平さんの年収はいくらですか?」としきりに聞いてきた。「良平さんくらい成功したら年収がいくらになるのか参考にしたい」だって。

近藤

誰だよそれ(笑)。

勝山

内緒ですけど(笑)。

近藤

さっきの「可能性を秘めた若手を応援する」という話で、もちろん応援はしているけど、同時にうちらも応援されないといけないので、そこは一緒だと思います。結局、コンテンポラリー全体の底上げもそうだし、コンドルズの底上げもそうだし、若手の底上げもそう。応援しつつ、むしろ盛り上がってくれないと困る。

勝山

情けは人の為ならず状態。

近藤

若い人同士でつるむと敵に見えちゃうこともあって。でも僕たちは少し先輩だし、あくまで部外者的立場にいて、しかもコンドルズ流で「圧倒的に」やれる。それは助け船になっていると思います。「このままダンスを続けていいのか?」と悩んだ時に、部外者の先輩がやってきて、「お前、ちょっと出てみろよ」なんて言われたら、いかにも乗りやすいですよね。

勝山

90年代バックじゃないけれど、俺たちがコンドルズを始めた頃は同世代が沢山いた。イデビアン・クルー、レニ・バッソ、ノマド、H・アール・カオス、珍しいキノコ舞踊団……。みんなディスり合いながらも意外と仲が良かった。あれは創生期の勢いだろうけど、ああいう団体同士のアツい感じも欲しいよね。

近藤

とりあえず火を付ける。火を付けないとアツくならないから。

勝山

だから立場上ちょっとした使命感はあります。

既存のスタイルと全く違う形でやってみたい

この企画の発案者は?

勝山

僕になるのかな。コンテンポラリーダンスのコンペやフェスは昔からよくあり、特に珍しい企画ではないけれど、それら既存のスタイルと全く違う形でやってみたいというのが、僕の個人的な野望。例えば『可能性の獣たち2017』の公演チラシにはプロフィールが一切書かれていない。当日パンフも配りません。その代わり、作品を上演する前にコンドルズと同じ要領でキャスト紹介をしました。今踊っている人が誰なのか、お客さんにはっきり分かるように。そして、ロビーでは各団体のブースを出し、そこで団体資料や次回公演のチラシを配る。あるいは過去公演のDVDや団体グッズを販売する。そういうところにこだわりを持っています。コンドルズで培ったメソッドを『可能性の獣たち』に突っ込む。それと、良平さん発案の「フェスへの参加はカンパニーのみ」という縛りも面白かった。

近藤

傾向として、ソロダンサーは自分のことだけを磨く人が多い。カンパニーだと責任感が違うんですよ。チームの場合、どうしても呼吸せざるを得ないので(作品が)小さくならないというか。

勝山

オープンに成らざるを得ない。

近藤

個人技を追われるのが一番困る。

出来るだけいじり合う環境はあった方がいい

ここでコンテンポラリーダンス界の現状について、お二人の私見をお聞きしたいのですが。

近藤

うーん、でもね〜、簡単にサクッと答えるのは難しい(笑)。

そうですよね、スミマセン(笑)。

近藤

例えば……、賞を獲ることがサクセスの近道だと思っている人が沢山いて、業界内にもそういう気風が強くて、というのはある。賞を狙うダンサーとコンペをやりたがる運営、そして、そこと無縁に呑気にやっている人。大きく言えばこのふたつに分かれるかな。賞を獲ろうとする人は個人技に走っちゃう。一方、大学の延長でダンスを続けている人は雰囲気があまり変わらない。僕はそういうことを気にするタイプです。「ディスる」という言葉は使わないけれど、ヨコの関係で出来るだけいじり合う環境はあった方がいい。近年は本当にいじりがいのない関係しか見えなくて。僕らは時々いじるけれど、でも若手とは世代がふたつ位離れちゃったから。僕はセッションハウスで若い人と一緒に作ったりしますが、そうすると段々目線が合ってきて、若い人たちが目標にしている方向性が見え、「それはどうかな?」と思うことも。最近は映像でダンス作品を観る機会も増えていて、もしかしたら創作や舞台公演とは全く別の方向からメディア進出する可能性も秘めている。有名なテレビCMに起用されても、モダンダンスとかコンテンポラリーとか、ルーツが分からない人もいるからね。あの人誰? とか思っちゃう。あるいは、ピナ・バウシュ(ヴッパタール舞踊団)の『カーネーション』を観に行った時に感じたことだけど、普段のダンス公演で見かける客層と明らかに違う。コンテンポラリーと受け止めているのか、あるいはブランド志向なのか、その辺は分からないけれど。

なるほど……。勝山さんはいかがでしょう?

勝山

僕らがのし上がって行った時との違いは、若手の各団体にプロデューサーがいないこと。あの頃は布施(龍一/レニ・バッソ)さんとか大桶(真/珍しいキノコ舞踊団)さんとか、色んな所に面白い人がいて、仲良かったり悪かったりするのですが、そういう人がいま全くいないのがつまらない。やっぱり若いプロデューサーに悪口とか言われたいんですよ。「コンドルズなんてロートルじゃん」、「俺たちがのしてやるよ!」、そういうことを言う奴らがいたら気持ちいいのに。それと、これはプロデューサーの功罪でもありますが、良平さんと作品を作っていて、「ここは分かり易く変えましょう」とか、そういうことをコンドルズはやれる。要はお客さんの目線に立ち、開かれた作品を作る。今の若手は間口の開かれた作品を提供する姿勢が弱くなっている気がします。制作面で言うと、悪いけど「ごっこ感」を感じちゃう。これで食っていくという鬼気迫るものがないし、中長期計画も立てないから三年先が見えていない。売り込みだってどんどんアポを取って無理矢理にでも会いに行けばいいのに。それは若い頃にしか出来ないことなのだから。

やり方を盗むのも良し、批判するも良し

2018年2月には『可能性の獣たち2018』が開催されます。参加する若手カンパニーにとっても、新しい可能性と出会いたい観客にとっても、貴重な機会になりそうですね。

勝山

前回はコンドルズのファンが沢山観に来てくれて、やはりそれは、多くの若手にとってチャンスなんですよ。自分たちのファンではなく、うちのお客さんばかりだから。コンドルズを観てくれるお客さんはコンテンポラリーダンスに親しんでいるし、見方だって分かる。そういう目に晒されて、喜ばれたりがっかりされたり、その経験はどんどんした方がいい。終演後のロビーで「○△ちゃん久しぶり〜♡」みたいなのはやらなくていいから。ああいうのを見るといつもイライラしちゃう。同窓会じゃねえんだから知らない客と喋れよ!

近藤

こういうところで仕掛けていかないとね。

これも素朴な疑問なのですが、コンドルズメソッドが詰め込まれたフェス企画は、お二人にとってやりたいことなのでしょうか? それとも「他に手を挙げる人がいないなら俺たちが!」という心境ですか?

勝山

僕はやりたいです。コンドルズは日本のコンテンポラリーダンスで事実上一番の人気が出て、世の中に知れ渡ったチームだから、良きにつけ悪きにつけ、俺たちのやり方から学ぶことはあるはず。やり方を盗むのも良し、批判するも良し。僕はプロデューサーだから「パクれるところがあればパクってよ。みんなもこれで食いたいんでしょ?」と言いたい。

優しいなぁコンドルズ。面倒見がいいんですね、きっと。

近藤

いや、そういう感じでもないと思う(笑)。意外とね、手の届くところにいるんですよ、みんな。地方でワークショップをやると、地元でダンスをやっていて「今年もまた会ったね」みたいな子が沢山いる。こちらからすると歯痒いわけで、その子にガッツがあれば一緒に作戦を考えたりするし、後に東京へ出てきた子も。とにかく、手の届くところに沢山いる。

可能性の獣たちがお二人の身近にゴロゴロいる。

近藤

そう、いるんです。そうなると面倒見とかじゃなく、単純に気になると言うか。

相応の努力やガッツ次第で、可能性が花開く獣も多い?

近藤

それは絶対そう。彼らはクライアントに踊らされているわけじゃないから。個々の上手い下手は置いておいて、みんなすごく可能性があるし、ほんとやりたい放題。続けて行けば何かにひっかかるチャンスがあるわけで、だからこそ面白いと思います。自分のやりたいことを転がし続けたら、こんな大きなことになっちゃった、みたいな若手は確実にいる。昔のコンドルズなんて正にそういう感じ。やってみたら大きな出来事がどんどん増えていき、めげずに食らいついてきた感が。

二年に一回は赤字覚悟の大勝負を

この記事を読む人には若手ダンサーや若手演劇人が多いと思うので、コンドルズ先輩から「頑張ろうぜ」的なアドバイスをお願い出来ますか?

近藤

えっとね、本番後とか練習後に、みんなもっと飲んだ方がいいよ。酒の好き嫌いはどちらでも良いけれど、最初から「自分は飲まないので」という空気を出してコミュニケーション拒否みたいなことは止めた方がいい。集まったらリアルタイムで話すべきで「後からメールで」とかイヤなんです。

勝山

僕はプロデューサーだからこういう答えになるけれど、一回でもいいから赤字覚悟の勝負をした方がいい。赤字覚悟の大勝負をしないと、勝つにせよ負けるにせよ、得るものが少ない。年に一回、理想は毎回、大勝負を。せっかく一般社会へ行かなかったんだから、採算度外視の勝負をして欲しい。

近藤

そんなこと言うと、若手がいっぱい事務所へ押しかけてきて「ドンドンドン! お前のせいで!!」って。

勝山

アハハ。じゃあ二年に一回くらいかな。僕は自分の墓石に「赤字の赤は情熱の赤」と書いてもらうつもりだから。

赤字覚悟と言えば、コンドルズがNHKホールでやったチケット代2,016円の公演は……。

勝山

もう大赤字ですよ。でもやんなきゃダメなんです。それはお客さんにも伝わるから。こいつら超バカなことをやっている! と。そういうのが一番気持ち良いじゃないですか。舞台って、そういうところを含めて面白い。「こいつら、この後どうするの?」みたいなね。だから赤字覚悟の大勝負を二年に一回。

お二人とも具体的なアドバイスで非常に興味深いです。成功例のコンドルズが言うと説得力があります。

勝山

赤字覚悟の大勝負をしてまでこの世に残したかった物は何か? つまりそういうこと。その経験を経て、初めて次の目標が見えてくる。盆暮れ正月、クリスマスとか誕生日とか、そういうイベントがなかったら一年なんて結構あっさりしてますよ。大勝負を見かけたら、それを観てみたいと思うのが人間ですから。

[文]園田喬し [撮影]鏡田伸幸(人物)

近藤良平

こんどうりょうへい○東京都出身、南米育ち。振付家、ダンサー、コンドルズ主宰。1996年にダンスカンパニー・コンドルズを旗揚げし、以降全作品の構成・映像・振付を手掛ける。カンパニーは2016年に20周年を迎えた。
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勝山康晴

かつやまやるはる○静岡県出身。ダンサー、コンドルズプロデューサー、バンドプロジェクト「FF0000」ボーカル、ROCKSTAR(有)代表取締役。1996年、近藤良平と共にコンドルズを旗揚げ。出演者兼プロデューサーとして活躍する。
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次回予定

コンドルズ×あうるすぽっと
大赤字コンテンポラリーダンスフェス第2弾
『可能性の獣たち2018』
2/11〜12◎あうるすぽっと

コンドルズ ニューダンス計画001
『ダブルファンタジー』
3/22〜25◎あうるすぽっと

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